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テンポ・ルバート、イン・テンポ (In Tempo/ Tempo Rubato)

  • テンポ・ルバートから、徐々にイン・テンポ、というのは一つの手順です。段々とその曲に入り込んでいく、その気持ちの動きを大事にしたい時の大事な手法だと思います。バンドが暖まっていない時に使うと、その間にドラムスがシンバルの位置を調性したり、ベースが胴を少し立て直したり、という光景がよく見られますねぇ(^^;)
    That Old Feeling
  • さて、That Old Feeling: from 'Three Blind Mice/ Art Blakey and His Jazz Messengers'をもう少しじっくり聴いてみましょう。イントロで、Cedar Waltonがかなり長めに、ノーリズムでソロをやります。これが、テンポ・ルバートです。フェイクしているのではっきりとどういう曲かは判りません。それでも聴いていると、どうもThat Old Feelingのような気がしてきます。「オイ、オイ、このままかよぉ」とシビレが切れる頃になって、ピアノに躍動感が出てきます。そうするとArt Blakeyが「Oh, Yeah. Here It Is」とか何とか呟いて、1分12秒頃から実に特徴的なリズム・パターンが入り込んできます。ここで、イン・テンポな訳です。「オッ、始まるのね」なんて感じです。そして3管の合奏による魅力的なシンコペーションが付いたテーマが提示されます。それから後は、もうスイング感と熱気に溢れた素晴らしい演奏になります。
    ヴォーカルなら、、、
  • 上記しましたが、ヴォーカルでヴァースから入る場合は、ヴァース部分はテンポ・ルバートで、その後リズムセクションが入ってきてイン・テンポというのが、定跡です。例えば、Pennies from Heaven: from 'In Person/ Tony Bennett'では、自在なテンポでヴァースを唄った後、1分14秒からイン・テンポとなります。また、But not for Me: from 'But not for Me/ Carol Sloane'では、有名な身の上相談の回答者への問いかけを、ヴァースの中に即興で入れています。恋が巧く成就しない恨み言をテンポ・ルバートで連ねた後、1分18秒からイン・テンポで唄います。I Left My Heart in San Francisco: from 'Live at the Sugar Hill/ Carmen McRae'でも、0分51秒まではテンポ・ルバートで、その後有名な歌に入ります。
    ということで、、、
  • テンポ・ルバートから、イン・テンポとなって、演奏が終わりに近付くと、またテンポが落ち気味になります。これを、リタルダンドすると言いますが、更にワン・ホーンの演奏なんかだと、ここで無伴奏の詠唱に入ることもあります。テンポ・ルバートになったと言っても間違いではないと思います。クラシックで言う所のカデンツァです。これは、その人が好きなだけの長さ、曲に対する最後の思いを込めて「唄いあげる」見せ場です。John Coltraneや、Sonny Rollinsなんかの良さが更に発揮される部分だと思います。

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