リフ(Riff)
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リフ(Riff)は、語源的にはRefrain(反復句)を略したものと思われます。ヴォーカル盤の歌詞カードによく出てくる歌詞の反復のところに、「Refrain」と書かれていることにお気付きでしょうか。あれは、そのくだりが何度も繰り返して歌われることを意味しています。詩の技法の一つである、この反復強調(Refrain)は、実に効果があるのですが、音楽においても古くから技法として使われています。ですから、リフは何もジャズの専売特許ではなく、クラシックの曲にもリフはあるのです。
カンザス・リフ
- リフは古い技法ですから、スィング時代にもあったわけで、その中心地といわれたカンザス・シティでは、特に顕著に、このリフを使ったジャズが隆盛を極めたそうで、特にカンザス・リフと呼ばれています。同地でのジャズは、アドリブの裏で単純なフレーズの反復でハーモニーをつけるといった手でリフをうまく使って、聴衆も含めて、皆が大いに盛り上がりました。そしてその中でのし上がったのがCount Basie楽団であり、リード・セクションなどがうまいリフを聴かせます。彼らの演奏の中でも、「One O'clock Jump」はリフ仕立ての演奏の代表格であり、大いにヒットしました。モダンジャズに時代になっても、この反復強調の仕掛けはよく使われています。
Tenor Madness、Blue Train、、、
- 演奏の中でリフを使って盛り上がるという手に加えて、リフを曲のテーマ自体にしてしまうことも良くあります。ジャズによくあるブルースは、12小節構成ですが、これは4 x 3に分解できるので、リフに適しています。また、後に定番化する32小節のAABA形式でも、リフが使いやすくなっています。ですから、ジャズの名曲にはリフ曲が沢山あります。「Tenor Madness/ Sonny Rollins」しかり、「Airegin/ Miles Davis」しかり、「Blue Train/ John Contrane」もそうですし、古いところでは「In the Mood/ Glen Miller」や「Billie's Bounce/ Charlie Parker」等も、リフ曲です。そう意識して聴けば、「なーーンだ、結構単純じゃん」と判りますが、それでもやっぱり、そういう演奏に惹き込まれてしまうのが、実に不思議です。でも、それこそが、反復強調という仕掛けのなせる技なのです。
セカンド・リフ、エンディング・リフ、バック・リフ、決めリフ、、、
- リフは曲の主テーマだけではなく、セカンド・リフといって、曲の中締めで再度の盛り上がりを図る手もあります。それについては、セカンド・リフの楽しさ でメモしましたので、そっちをご覧ください。
- 伝統があるバック・リフのモダンジャズ版では、何と言っても「Walkin'/ Miles Davis'」が、その白眉でしょう。アドリブの裏で、ソロイストを鼓舞する様子が目に見えるようです。
- それから、「決めリフ」というのがあります。リフのフレーズは、単純ながらキャッチィであることが肝心です。そして悶絶したくなるほどに決定的な魅力を持つリフが、演奏の締めに現れて聴衆が総立ちになる場合などには、それを「決めリフ」と呼んでいます。
ロック、ミニマル、、、
- ロックの世界は、余り得意ではありませんが、この世界でもヘヴィ・メタなどを中心に、リフが大きな顔をしています。ちょっと頭に浮かんだフレーズだけを持って、練習に現れて、皆といじっているうちに曲が出来ちゃうという話もよく聴きます。そして、ギターやエレベが執拗にリフを繰り返して、演奏がだんだんと盛り上がっていくという仕掛けは、ジャズのバックリフそのものと言えます。この反復強調が、その後の変遷を経て、ミニマル音楽につながっていると考えていますが、まんざら的外れではない気がします。
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