チェイス(Chase)
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チェイス(Chase)は、「Clifford Brown and Max Roach」の「Blues Walk」のように、短い間隔でアドリブを交換し合うことです。
「Blues Walk」でのチェイス
- 「Blues Walk」は名演ですから、皆さん一度はお聴きになっている筈です。ハードバップの典型的な演奏で、アドリブはClifford Brownに始まり、次がHarold Land、そしてRichie Powell、続いてMax Roachが素晴らしいスティックさばきを聞かせたところで、5分半くらいのところです。そして、そこから約1分ほどが、火の出るようなチェイスです。Clifford BrownとHarold Landが、先ず4小節単位で、次に2小節で、更には1小節でと、きらびやかなアドリブの応酬で、正に「畳みかける」という表現がピッタリの妙技です。アドリブ交換の間隔が狭くなるにつれて、段々と興奮が盛り上がります。これが、チェイスです。
「追っかけっこ」
- チェイスの語義は、「追っかけっこ」です。ですから、「バース・チェンジと同義」ということで間違いはありせんが、Nelsonは、バース・チェンジとは少しニュアンスが違うと受け取っています。それは、こうです。基本的に「バース・チェンジ」は、アドリブ交替の変形です。普通は、コーラス単位でアドリブを交替する所を、「バース・チェンジ」では、8小節から1小節くらいまでの短い単位で、アドリブを交替します。この時に、4バース・チェンジなら4小節毎の交替を、何回か繰り返します。場合によっては、二人での掛け合いではなく、数人でやり取りしても良いのです。よく例に挙げるConfirmation: from '4,5 and 6/ Jackie McLean'では、Jackie McLean、Donald ByrdそしてHank Mobleyと、3人でやっています。そして、アレンジによっては、その交替の頻度を変化させ、段々と交替を早めてチェイスすることがあります。上記「Blues Walk」でのように、4小節でやって、2小節でやって、極端な時には1小節でやるという具合に、段々と間隔を短くするのです。そして、更に駄目押しで、最後は二人でアドリブを重ねあって同時にやるという展開にまで持っていく時もあるのです。これが、狭義の「チェイス」だと思います。これを聴いていると、何かに追っかけ(chase)られているようで、正に「手に汗握る」という緊迫感が生じます。聴衆も興奮してしまって、ヤンヤの拍手などが来るものです。「追いかけっこ」にも、最後は「掴むか、掴まれないか」と同様の緊迫感があります。その辺からの連想で、こういう間隔を段々短くしていく「バース・チェンジ」を、特に区別して「チェイス」と称したのだと考えています。
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