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コール・エンド・レスポンス(Call and Response)

  • コール・エンド・レスポンス(Call and Response)について、もう少し。
    やはり'Moanin'から、、、
  • 「'Moanin'」と言えば、クラブ・サンジェルマンでの熱狂的なライブのなかでも卒倒する人が出た程に、Art Blakeyが率いる2管編成のクインテット、Jazz Messengersが熱演したものです(蛇足ながら、卒倒したのはジャズ・オルガニストのHazel Scottで、このためこの曲を「Moanin' with Hazel」ともいう)。テーマは、作曲者であるピアノのBobby Timmonsがリードすると、管を含めた残りの4人が合いの手を入れるという掛け合いによって、提示されます。ピアノが調子の良いフレーズを繰り出すのに呼応して、トランペットとテナーサックスがハモリながら、2音のフレーズで受けています。掛け合いと言っても、インスト演奏ですから歌詞はありません。でも、聴いていれば掛け合いになっていることは、直ぐ判ります。この曲が流行った大昔のことですが、「蕎麦屋の出前でも、鼻歌で唄っていた程に有名になった」という油○さんの「たとえ話」が、ウソ臭くなかったと言いますから、それ程に親しみやすいものとも言えます。
    教会音楽
  • 米国南部での教会における伝道の場面は、映画などで御覧になったことがおありでしょう。ひとしきりお説教があった後、そのまま賛美歌になだれ込みます。リード・ヴォーカルが素晴らしい声を聞かせると、コーラス隊がタンバリンなどで調子を取りながら、合唱でそれにこたえます。リードの歌詞の流れに弾みをつけるように、「それから、どうした」という感じの合いの手を入れる、あの流れが「コール・エンド・レスポンス」です。教会を離れても、例えばMahalia JacksonやRay Charlesの公演などで、主役の歌に合わせて舞台脇に位置するコーラスが調子を合わせる仕立てがありますが、それもこれなのです。教会では、リード・ヴォーカルは神の声であったり、信仰告白をする信者の声であったりし、受け手は一般信者の声を担当します。
    「シャウト(Shout)」と「ブロゥ(Blow)」
  • ついでながら言えば、このリードする方の歌唱は、絶叫することも多いので、「シャウト(Shout)」とも呼ばれて、一部の歌手のウリになっています。ジャズのインスト演奏における、サックスの「ブロゥ(Blow)」も同様のウリであり、シャウトと同様に、聴衆を熱狂に引きずり込む仕掛けです。このスタイルは、はまりやすく仕掛けられており、多くの場合に曲の最後で、大盛り上がりをします。その部分では、歌詞がリフレインになっており、決め言葉をしつっこく繰り返してやり取りしたり、金切り声でシャウトしたりします。すると案の定、その場が熱狂的な盛り上がりを見せ、一部では失神したりする人も出るという「Orgy(熱狂)」をもたらします。
    しつっこい繰り返し
  • このしつっこさは、例えばGrant Greenが、殆どワン・コーラス全体を、同一音程の音を繰り返しピックしながら迫る、という手管と似ています。ファンク系の人はこの手をよく使いますし、Kieth Jarrettだってたまにはやります。Herbie Mannも、お囃子ものでこの手を使っています。これらを聴けば判るように、その執拗さ加減は大抵ではなく、味噌汁・漬物の日本人にとってヘキエキするほどの過剰感がありますが、また気持ちが高まることも否定できません。
    「Work Song」でも
  • 恐らくもう一つの有名な例は、「Work Song」でしょう。この曲では、フロントの有名な旋律が2分割されており、アルトのJulian Adderleyが最初のフレーズを呼びかけるように吹くと、コルネットのNat Adderleyがそれに呼応したフレーズでお返しをします。また、各フレーズごとに、ドラムスが「ゥンッ、タンッ」と合いの手を入れ続けます。フロントのテーマだけでも魅力的ですが、この2様の合いの手、すなわち「コール・エンド・レスポンス」が入ると、体が思わず揺れてしまいますし、またバンド全体が一体となってスィングしている感じが強まります。後者のドラムスの合いの手は実に印象的なものであり、この曲の数多いヴォーカル版でも人気の高い、Nian Simoneのヴァージョンでも、ドラムスとの掛け合いの感じで、ヴォーカルが進行します。
    我が国でも、、、
  • 「コール・エンド・レスポンス」といえば、何か洋物の専売特許に聞こえますが、実は、こういう手管は我が国の民謡でもよく見かけるスタイルです。傑作と言っても過言でない「秋田音頭」の合いの手がそうですし、よくある「エンヤー、ドット」とかいうのもあります。河内音頭で「ヨイト、ヨイヤマッカ、ドッコイセェノセェ」というのだって、これです。音頭自体が、年に一度のお祭りの出し物です。一般民衆が、ハレの場である祭り舞台に上がるのに、気後れをするのが当たり前です。舞台上で立ち往生しないように、周りが本人の歌を助けてやる工夫の一つが、「コール・エンド・レスポンス」だと思います。周りから色々と合いの手を入れてやって、御当人の気持ちをほぐしてやり、また調子に乗せるための「民衆の知恵」ではないか、と愚考しております。

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