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Carol Sloaneの人とその周辺
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- 60年代に活躍した後フッツリと姿を消し、80年代以降に再度人気が出ることになった、Carol Sloaneの姿は、以下のようです。
誕生
- Carol Sloaneは、1937年にロードアイランド州プロヴィデンスでCarol Morvanとして生まれた。その環境は、正に古き、良き米国の典型的な家庭であったという。丁度、世界がキナ臭くなる頃であり、父は徴兵事務所に出かけて新兵の名簿を手に入れ、全員をThanks Giving Dayに夕食に招待して、手作り料理を振舞ったというし、兵役中も慰問袋を送りつづけ、彼らの無事の帰還を祝った、などという家庭であったらしい。叔父さんがサックスとピアノを演奏する人で、彼女の歌唱の才能に、最初に気づいた。その叔父の紹介で、14歳のときにはEd Drewのダンスバンドで歌い始めている。その後も、18歳のときに、ミュージカルKiss Me, KateのVivian役を貰い、ドイツに公演に行っている。
デビュー前後
- 22歳から2年間、Les and Larry Elgart楽団で活躍しており、この時に芸名をCarol Sloaneとしている。60年にはピッツバーグジャズ祭に出演している。その時の歌唱が、ヴォカリーズの奇才、John Hendricksの目にとまり、時の人気グループであるLambert, Hendricks and Rossの出演時にアニー・ロスが急病となったことから、トラ(代役)に抜擢され、それを無事にこなして、準メンバーとしてその後も参加することになった。このことからも、この時期には既に只のジャズ・ヴォーカルではなく、技巧的にも相当のレベルになっていたことが分かる。Lambert, Hendricks and Rossグループの活動の関係でニューヨークに出たSloaneは、人気スポットのBirdland、The Five Spot、Half Noteなどで、トップジャズメンと交流して、さらにヴォーカルに磨きをかけていく。
本格的なリーダー盤
- 故郷で開かれた61年のニューポート・ジャズ祭では、満場を魅了する歌を披露しており、その時の活躍が注目されたのか、コロンビアにリーダー盤を2枚を吹き込む機会を得た。Sloaneは基本的に、コントラルトといわれる低めの声域で、スィングしながらも、歌詞の持つリリシズムをしっかり伝えるスタイルで、Ella FitzgeraldやCarmen McRaeの影響を自分のものとして消化している。その頃の彼女のショゥでは、Bill Cosby, Woody Allen, Lenny Bruce, Richard Pryorなどが前座を勤めていたという。 それやこれやで、60年代は主としてナイトクラブや、テレビのTonight Show出演などが結構あり、国中に知られるようになっていった。例えば、この頃に、Oscar Petersonの前座で、Village Vanguardにも出ている。
Wood Shedding
- その後は、前述のように、米国内にロックの嵐が猖獗を極めたこともあり、活躍の場を失ってしまった。メル・トーメ、サラ・ヴォーンなんて大物ですら録音が無くなったというし、Carolのようにポップスは歌わない路線では、さらにそれが厳しかったことは容易に想像できる。ジャズ誌Down Beatにレコード評を書き始めたのもこの頃のことである。一説によれば、東海岸で弁護士秘書のようなことをやりながら、地元で歌ったり、ラジオのDJをやったという。この時期に、友達も支援してくれて出した自費出版盤が、「Subway Token」らしい。そして、この盤の評価がかなり良く、再出発へと繋がっていく。
日本での再発見
- というところに、そのSloaneに光を当てたのが、日本のレコード会社である。(こういう話はウレシイ) 70年代半ばから、活動を再開した彼女が、Roland Hanna等と来日した時に、当時滞日中のHelen Merrill、「麻雀放浪記」の阿佐田哲也等と私的なセッションをやって、国内の業界人の間での認識が高まり、日本制作の録音が少しづつ出始めた。それが、米国でも再認識のきっかけとなったらしく、本場の米国でも、Contemporary, Concordなどで録音も増えて行く。Contemporaryでは、「Love You Madly」をHelen Keaneの制作で入れており、これがメジャーレーベルとしては、26年ぶりの再登場となっている。いわゆる、今出来の技巧ひけらかしの女性ヴォーカルではない。良く言えば基本と大事なことを押さえた、悪く言えば古めかしいことが身上の彼女を受け入れる素地が、まだ米国には残っていたようであり、それは本人にとっても、興業界にとっても、うれしい誤算であった。Sloaneほどにディクションが素晴らしく、情感溢れる表現力があり、しかもよくスィングする、というような人は、他でそれほど簡単には見つからないこともあったようだ。そして、今や、女性ヴォーカルをリードする、とまで行かないまでも、しっかりと一角を占める人になっている。現在のところの32作のうち、90年代に発表されたのが10作品もあることからも、その円熟味の素晴らしさが判る。
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