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Tenor Madness/ Sonny Rollins vs John Coltrane (その2)
  1. 「Tenor Madness」は、本来はこういう曲名及び盤になる筈がなかった企画のようで、先輩の話などを総合した、推測に近い事情を知る限りの範囲でメモします。
  2. この録音は、リーダー以外の面子は、当時のMiles Davis5重奏団の御大抜きの面子です。Miles Davis5重奏団は、この時、たまたまニューヨークに来ていました。このクインテットのリズムセクションは、素晴らしい面子ですから、この人たちとセッションをすれば、面白い筈です。そこで、この盤の企画が決まり、Rollinsのワンホーン・カルテットで行こうとなったのだそうです。この1か月後に、大名盤「Saxophone Colossus」が録音されます。それもワン・ホーン盤であり、ピアノはTommy Flanaganです。当時絶好調のRollinsの魅力を、最大限に引き出すにはこの形式がピッタリです。
  3. 伝承によれば、偶然なことらしいのですが、この録音をしている最中に、Coltraneがスタジオに顔を出したようです。こういうことはよくあることらしく、スタジオのスタッフが、「今、Rollinsカルテットの録音が始まっているョ。」とでも、教えてくれたのかも知れません。Rollinsにとって、Coltraneは後輩に当りますから、ギャラ稼ぎにもなるしということで、「まぁ、ちょっとお前も入れョ」となったようです。
  4. それで、「どんな曲をやるかなぁ。」となった時に、このブルース曲を録音したということだそうです。簡単なリフですから、これを用意して居たんであれば、Coltraneが顔を出さなくても録音したのかもしれません。もし物事がそう展開しておれば、他の曲同様に、この曲もワンホーンのカルテット編成での演奏になっており、例えば「Sonny's Blues」なんて名前になっていた筈です。
  5. こういうリフの初演時には、曲名なんかまだ付いていないのが普通です。この曲も、譜面らしきものはあっても、タイトルなんか付いていなかったに違いありません。サッチモさんにも、「Undecided(未定)」なんて、未定のままで放ったらかしながらの名曲(^^;がありますし、、、しかし、結果的にテナー2本によるバトルとして録音して、しかもその演奏が思いの外に素晴らしかったわけです。「これは、売り物になる」と判断した制作者は、曲名がまだ決まっていなかったことに目を付けて、「Tenor Madness」という名前を提案し、しかもそれを盤のタイトルに持ってきたのです。営業的には、適切な判断と思えます。
  6. 以上のように、もしColtraneが顔を出していなかったら、こんな素晴らしい演奏は生まれなかったことが判ります。先ず第一に、この曲はこういう名前にはならなかったでしょう。また、第二に、こういう標題の盤も出来なかったでしょう。
  7. この演奏は、そういう偶然の所産なのです。
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