「JBLのすべて」
- 「JBLのすべて」は、Stereo Sound社が刊行したムックです。1993年の発行で、2,500円という価格です。
構成
この本の主たる内容は、以下のとおりです。良い記事だと個人的に思ったものは、ゴチックにしてあります。
- 私的JBL論(山中敬三)
- 私とJBL(朝沼予史宏、井上卓也、倉持公一、菅野沖彦、柳沢功力、佐久間輝夫の個別稿)
- 代表的スピーカーシステムの魅力を聴く(朝沼予史宏、菅野沖彦、山中敬三)
- ハイエンド・アンプでK2/S9500を堪能する(井上卓也)
- ベストアンプ・セレクション(井上卓也、佐久間輝夫)
- オーディオファイルのためのSRシステム(佐久間輝夫、細谷信二)
- JBLの醍醐味はユニットにあり(井上卓也、細谷信二)
- デザイナー・ミュージシャンが語るJBLの魅力(田中一光、近藤等則)
- 天才の早すぎた死(朝沼予史宏)
- JBLエンジニア列伝(細谷信二)
- われ、JBLとかく戦えり(菅原昭二)
- 時代を画した名器たち(井上卓也、山中敬三)
- JBLオリジナル・カタログ・広告
- スタジオ・モニター・シリーズの変遷をたどる(井上卓也)
- JBL History/ 1902 - 1993
- JBL現行モデル一覧
- 「JBLのすべて」発刊によせて(ブルース・スクローガン社長他)
これでもわかるように、JBLについて語ることが、殆どの評論家にとって、実は自分の評論家としての出自を語ることになってしまっています。それが、このブランドの製品が持つ不思議な魔力を物語っています。
面白かったのは、、、
- ジャズファンならずとも、オーディオに関心のある方にとって、「JBL」製品は何らかの見識を持たずには済ませられない存在であったようです。本書にも、国内オーディオ評論家の殆どが自分とJBLとの位置関係について触れています。また、評論家ではありませんが、田中一光、近藤等則そして菅原昭二の各氏が、市井のファンとしての声を聞かせてくれています。特に、菅原さんの孤独な戦いは、いつものことながら、読み応えがあります。このなかでは、やはり井上さんのいうことが一番真っ当ですが、若手として朝沼、佐久間氏等も、JBLによせる熱い思いを語っています。
アンプも、デザインも、、
- 残念なことに、本書はスピーカーに関する記述が主体であり、同ブランド製のアンプについては、あまり触れられていません。真空管アンプ時代からトランジスター時代への移行期において、JBL社は「T - Circuit」と呼ばれる回路を考案、実用化しました。現代のアンプのすべてが採用しているこの基本回路は、「SA600」、「SG520」、「SE400S」等の名器に採用され、その卓抜した回路技術は、教科書的な存在となりました。加えて、それらアンプが纏った意匠は、工業デザインの一つの極致を示すものとして、賞賛されました。我が国でも、これらのデザインが栄久庵憲司等を刺激して、その後のラックス、マイクロ等の製品で開花した、と理解しています。
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