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「クラシック・ヴァルヴ」

  • 「クラシック・ヴァルヴ」は、誠文堂新光社が刊行した真空管研究書です。真空管が発明されて以来の歴史と、著名な真空管の説明がなされている専門書です。となれば、「ちょっと突っ込みすぎなんじゃないの」と思われるかも知れません。しかし、技術書として徹底した事実の積み重ねの合間から、著者の真空管にたいする愛着、愛情がにじみ出てくるのが感じられ、言ってみれば「ラブレター」ですらあると感じました。Nelsonは、アンプの自作はそれほどしませんが、そういう者でも思わず惹き込まれます。変な言い方ですが、「事実のみで構成された恋愛小説」といっても良いでしょう。1994年の発行で、3,900円という価格に購入をためらったことは事実ですが、読んでみて、この名著の一端を理解したと思っています。
    構成
    「クラシック・ヴァルヴ」この本の構成は、以下のとおりです。
    • 現代に生き続ける真空管
    • 欧米の主要メーカー、ブランド一覧
    • 工芸品としての真空管
    • 真空管の誕生
    • 最初期の真空管
    • ラジオ放送の開始
    • 真空管の進化と多様化
    • 軍用と民生用真空管
    • 真空管関連年表
    • 真空管の規格と実測値一覧表
    お分かりのように、まったくの専門書、研究書です。でも、「よくこれだけ情熱を持って調べられたなぁ」と、門外漢でも感服してしまう内容です。
    東芝の大塚さん
  • この本の著者は、東芝の大塚久さんという方です。この世界では、世界的な研究家として有名だそうで、ネットで世界中の研究家との情報交換も盛んにやっておられるようです。Nelsonの勤め先は、高周波伝送関係の開発研究もやっており、同社の技術者が出入りされます。大電力高周波伝送では、今でも、特殊な真空管(といっても、オバケ程にでかいものですが、、、)が、現用されています。ある時、「そうか、大塚さんも同じ東芝さんなんだ」と気付いて、技術の方との雑談の折に、大塚さんのことを聞いてみました。その時の話では、大塚さんは同社でも別格の先輩で、とても普通の技術者などは直接お話もできない、雲の上の人なんだそうです。「そうですか、そんな本を出されているんですか。大塚は、ヴァルヴのことなら何でも来いという、生き字引みたいな人ですから、良い本なんでしょうねぇ。」と技術者が語ってくれました。本書の巻末にある著者紹介を見ると、オーディオ用真空管について「突っ込んでみようか」という気になられたのは、40代になってからだったそうです。当時赴任中だったサン・フランシスコのさる所で真空管を見つけたのが切っ掛けとのことです。その後、強電のお仕事を離れた趣味として、オーディオ用真空管のコレクションを始められたようです。無論、お仕事では大電力の事業用真空管を扱っておられるので、素地は有ったのでしょうが、その後さらに深く研究されたとのことです。

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