「マルチアンプシステム」
- 「マルチアンプシステム」は、ケンソニック社長の出原真澄さんが、昭和53年に出された本で、恐らく出版をした日本放送出版協会が出していた「電波科学」誌に書き溜めた原稿を、単行本用にまとめたものではないかと思います。この本は、類書と違って、理論よりも実践上の示唆に富むもので、読者が普通に入手可能な市販機器の色々な組み合わせの中で、マルチアンプの要諦を徐々に説く、という形式を取っておられます。従って、理論書のように読んで判ったとしても、実際の役に全く立たないという欠点がなく、手持の機器をいじりながら読み進むことができ、直ぐに役に立つこと請け合いでした。
構成
- この本の主たる内容は、以下のとおりです。
- マルチウェイ・スピーカーシステム
- マルチアンプ方式のメリット、デメリット
- マルチアンプ方式のアウトライン
- チャンネルデバイダー
- マルチアンプ方式に適したスピーカーと注意事項
- マルチアンプ方式に適したパワーアンプ
- システムを決定付ける特性とその決め方
- 実技(1):LCネットワークとの併用
- 実技(2):システムの紹介
- 付録:市販国内・外スピーカーユニット45機種の特性
- 上記の章立てで判るように、マルチウェイから説き起こして、マルチアンプの特徴を説明し、デバイダーに触れた後、市販機器によるシステム調整例を豊富に例示しています。無論、著者自体のシステムが使われるという限界がありますが、一般的な機器を使っておられるし、読みこなせば他の機器にも応用が可能ですから、実用書としては「良くできている」と言わざるを得ません。Nelsonも、いつもその気で本屋の冷やかしは欠かしませんが、ここまで実際的にマルチアンプを研究した本は、他には無いでしょう。
出てくる機器
- ケンウッドの社長さんですが、オーディオ研究家としてこの本を書いておられるので、出てくる機器は、定番のJBL、Altecをはじめ、国内製品ではアキュフェーズ、ソニー、パイオニア、コーラル、ゴトー等々と、特に偏向した選定ではないのが好感が持てました。
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