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ヒノオーディオ日向野さんとSPネットワーク設計用の計算尺(3)
  • 日向野さんが苦心をして作られた右掲の「HINO AUDIO: Technical Slide Rule」の各論の2回目は、右掲のアッテネーター回路の素子の選択が決まるミニ計算尺です。自前のSPを作ろうと目論む時に問題となるのが、ウーファー、ツイター、そして時にはスコーカー(中音域用)やスーパーツイター(超高音域用)の音圧レベルの平準化です。一般的に低い音域担当のユニットは口径が大きく振動部が重いので、小さめの口径が多い高い音域担当のユニットよりも低能率です。これらを、そのまま繋ぐと、高い方の音のレベルが大き過ぎてバランスが取れません。コレをバランス良くしたくても、ネットワークはパッシブな回路なんで低域側を増幅することは出来ません。このためには、能率が高い方のユニットをなだめて、レベルをアッテネート(減衰させる)しかありません。
    コレをやる時にはやはりアッテネーターで余分な音圧を抵抗に捨てて・・・
  • 全体の裏側に当るこのミニ計算尺は、右フレームのように真ん中に穴が開いていて、中の白い紙を動かして減衰量を選びます。例によって、SPのインピーダンスによって数値が変わるので、値が3つ示してあります。この例のように、8オームのユニットの音圧を6デシベル落す場合には、ネットワークの出口端子に直列に4オーム、並列に8オームを使うように計算尺は指示しています。こうすると、ネットワークを通って来た電力はこの2つの抵抗を温めるだけで、音も出さずに電力を消費してしまい、残りの減衰した電力だけがSPに流れ込む、ということになります。そして、これは数学の授業ではなく、現実の世界での話ですから、4.0とか8.0と言う値の抵抗を持っていなくても、3.8とか8.2と言ったような僅かな差異の抵抗が手元にあれば、それを使っても目くじらを立てる程にドえらい間違いになることはありません。というのも、世の中のSPのインピーダンスは、ピィッと真っ直ぐな直線状で変動しないなんてことは無く、ヘロヘロしたカーブを描く場合が殆どです。定格8オームと言うのが恥ずかしいぐらいに、8オームである範囲は狭いのが普通です。その辺は余りに気にせずに、出てきた音がそれなりに満足出来れば、それ以上のことは考えない方が、幸せなのです。
    一般的に言えることですが・・・
  • 余談になりますが、この4とか8オームの抵抗に、プリント基板で使うようなヘナヘナの素子を使うことは出来ません。ここはパワーアンプの出力をSPに流し込む所ですから、大きな音で再生する時には数十ワット、少なくとも数ワットレベルの、それなりの電力が通過する部分です。ですからワット級容量のセメント抵抗(右上)とか、頑張るのならDaleの無誘導抵抗(右下)とかいった、見ただけでも信頼性がありそうなのが必要です。これはつまり定格容量という考えた方で、電子回路で数ミリアンペアしか流れないと判っている時なら、それこそプリント基板用の小型抵抗で構いません。しかし、何ワットも通過する所にそんなのを使うと、ジュール熱損失で真っ赤っかになって焼き切れてしまうからです。
    減衰量が定まらない場合には・・・
  • 「先に言えよ・・・」という話になりますが、音出しして見なければどれくらいの減衰が適当か検討も付かない場合には、ヴォリューム(右)と一般に呼ぶ、回転ノブが付いた丸型の素子を使うのが無難です。これは、上図の4とか8とか行った挿入抵抗を一定範囲で自由に動かせるように出来ているので、ユニットをどれくらい大人しくしてしまうかを、ヴォリュームを動かしながら耳で判断できます。ただし、これにはガリという雑音が付き物で、摺動部分の接点が時間経過とともに腐食して、ガリガリ音が遅かれ早かれ出るようになりますし、悪くするとひ弱なツイターなどは壊れます。ですから、暫くヴォリュームで聴き込んで大体の按配が判ったら、良いなと思う点での抵抗値をテスターで読んで、その値の上質な固定抵抗に代えるのが吉です。
  • とまぁ、ここで一服しましょう。まぁこの先は、、、色々あって長くなりますので、次回に触れます。

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