ステップ・ダウン・トランス
- さて、200Vを部屋まで引っ張ってきて、どんなステップ・ダウン・トランスでジャズを聴くか、、、というお話です。
その役割
- ステップ・ダウン・トランスは、苦労して聴き部屋まで引き込んだ200Vを、使い易い100Vへと減圧してくれます。従前の100V使用時よりも良い音を出したいのですから、適当な、例えば産業用のトランスの流用で済ますわけには行きません。まず、大音量で腰砕けせず、微小音量でも付加ノイズが目立つようでは困ります。しかも、オーディオ機器の直近まで、苦労して200Vをワザワザ引き込んだんですから、普通の100Vよりも元気のある音を叩き出してくれるのでなければ、タダの箱に過ぎません。そういうウルサイ注文があるので手間がかかることもあり、オーディオ用とされるステップ・ダウン・トランスは産業用の10倍近い強気の値付けがなされたりし、またお金が余っている方は平気でそれをあがなわれるんだそうです。
電力容量
- トランスは、電磁誘導を利用して、入力電圧を出力電圧に変圧する機器で、1次と2次の巻き線比によって所定の電圧を得るものです。200Vから100Vへのステップ・ダウン・トランスでは、巻き線比が2対1になっていて、2分の一に減圧されるわけです。個々のトランスには定格というものがあり、使用する電圧、電流等の範囲が決まっています。これを超えて使用すると、所定の変圧が出来ないばかりか、過熱したり、異音を発したりして、悪くすれば破損します。出力側につないだオーディオ機器が音楽に応じて大きな電力、つまり電流を要求した場合に、巧くないトランスですと、供給電圧が落ちることがあります。これをレギュレーションが悪いと称するようで、その使用条件ではトランスの電力容量が足りないんです。色んなメーカーの資料を見ると、出力側に繋ぐ予定の機器の消費電力を合計した上で、それの2、3倍の定格容量のものを使うように推奨しているようです。そうしないと、「トランスを入れたけど、何だか音が寸詰まりになっちゃったョ。」というトホホなことになるようです。だったら、初めからそういう定格容量で表示すれば良いようなもんですが、普通の産業用では容量一杯でも何とかなるようで、オーディオに限っては高音質を得るために余裕を見なさいということのようです。音キチさんは一般的に文句が多いんで、「容量に余裕を持たせる方が良いですよ。」とあらかじめ予防線を張っているのかも知れません。
トランスの種類
- トランスは、何もオーディオの専用部品ではなく、電気を使うようになって間もなく使われ始めた、長い歴史のある産業機器です。稀に空心のものもありますが、ほとんどが鉄心を使ったもので、その形状によってカット・コア、EI型、トロイダル、Rコア等々がありますし、コアに通常の珪素鋼ではなく、アモルファスを使うとかいう違いもあるようです。どれが良いかについては、色んな方に色んな薀蓄があるようです。比較的新しい種類に当るトロイダル、Rコアは、コアに切れ目が無いので、漏れ磁束が少なく、効率も良いそうですが、芯にコイルをきれいに巻くのが大変だとか、突入電流が大きいとか欠点もあるようです。パワ−アンプの広告なんかによく出てくるんで、おなじみの話題ですが、昔ながらのEI型等が今も使われていますから、決定的なことは言えないようです。またよく見かける絶縁トランスでは1次側と2次側とは絶縁されており、巻き線は独立していますし、アースも別になっています。トランスにおける電力輸送は電磁誘導によっており、電磁誘導では磁束が共有されておれば、巻き線が繋がっていなくても良いのです。1次と2次の巻き線が絶縁されているので、たちの悪いものでない限り、ノイズの通過はありません。
唸り
- トランスは、大なり小なり、唸ります。磁気空隙が唸りが出る最大の原因のようですが、入力波形が歪んでいたり、直流バイアスがあったり、容量を超える使い方をしたりといった場合にも、唸るようです。「ガチガチに固めて唸らせません」という人や、「少しは唸るのが自然であって、唸りを殺すと音も死ぬ」という人や、色々のようです。余り大きな唸り音は、音楽鑑賞の妨げですし、別室にトランスを置ける人ばかりではないんで、まぁ、ほどほどに邪魔にならない程度で、、、ということでしょう。
仕上がり
- ステップ・ダウン・トランスとして仕上がるためには、トランス本体だけでは済まず、他にも幾つかの部品があります。入力側では、200Vを受電するプラグ、ケーブル、フューズ等々があり、出力側には複数の100Vコンセントがあります。どれをとっても、電線音頭の主役達ばかりですので、凝りだすとキリがありません。更に、全体を収めるケーシングもありますし、置き場所、インシュレーターも効くそうで、例によって、「コッ、コレは何だと、思わず叫んでしまいました。」とかいう流言飛語(失礼!)が行き交う世界です。オーディオがそうであるように、ステップ・ダウン・トランスもこれら全体が音に影響するようです。そして、トランス本体だけではなく、こういう付属部品も価格に跳ね返ります。先頃、200万円近いのが発売されて、好評・悪評入り混じった発言が、色んな掲示板で花咲きました。値段を決める大きな要素である電力容量だけでいえば、産業用ならkVA級でも数千円からあるようです。オーディオ用なら、数万円から、高いのは数十万円ということになります。趣味の世界ですし、「金を出せる人から金を引き出す」というのは、商売の要諦です。
Nelsonの場合は、、、
- 最初に書きましたように、20万円足らずで200V駆動が試せるようなので、「一寸試してみるか。」という軽いノリです。馬鹿高いトランスもあるようですが、それには手を出さずに、カット・コアの良心的なメーカーさんの製品を手に入れました。
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