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単相3線式200V
  • 単相3線式200V について整理して置きます。
    200V化
  • 前記したように、家電機器、特にオーディオ機器は、装置内では直流電源を使いますが、電力会社は交流を供給しています。そこで、殆どの機器には入り口に交直変換器が付いています。この変換器は、トランス、コンデンサー、チョーク、ダイオードなどからなっています。この変換器は、電源電圧や、電源周波数が高いほど、一般的に効率が良く、200V化はその面でも良いことです。しかし、良い点はそれに止まらないのです。
    専用配線
  • オーディオ機器を他の家庭電気製品による電源の汚染から守る手は沢山ありますが、200Vでは無論のことですが、100V電源のままでもよく採用されるのが、分電盤からオーディオ機器コンセントまでの配線の専用化です。例え話になりますが、この専用配線化と似た話が、スピーカーの駆動に普及しているバイ・ワイアリングという手法です。
    • ここで、ちょっとバイ・ワイアリングの話に寄り道します。
    • このバイ・ワイアリングでは、手持ちのパワー・アンプはそのままで、スピーカーの低・高音に別個のケーブルで出力を出して、スピーカの鳴りを良くします。スピーカーは、駆動される時に、逆起電力等々の悪さをします。しかし、バイ・ワイアリングをすると、低・高音のユニット毎に、ネットワーク素子が切り離されるので、良い効果が出るのです。
    • 例えば逆起電力を例にとると、低音ユニットから生じた逆起電力は、ネットワーク内で高低が分離されているので、直接には高音ユニットに行けません。先ずネットワーク素子を通り、パワー・アンプの出力端子に戻り、それに並列に繋がっている高音部への出力端子に向かい、高音用ネットワーク素子を通って、高音ユニットに入ります。この長い道中で、ノイズが疲れて(^^;しまって元気が無くなるだろうというのが、狙いです。バイワイアリングをしないと、ネットワーク素子の中で低・高音が繋がっているので、逆起電力は元気一杯なまま、モロに高音ユニットを揺さぶるのです。
    • 更に、パワー・アンプに戻った逆起電力は、十分に内部抵抗が低いアンプでかなり吸収されますから、高音ユニットに行く逆起電力自体が減衰してしまっています。
    • つまり、ユニット間にケーブルの長さだけの距離を置くことになり、それによって悪さの伝播が軽減されるわけです。
    話を戻して、オーディオ用の100V専用配線も、同様の発想から来るものです。家電機器と入り混じった環境でオーディオを稼動させるのではなく、電力のバイ・ワイアリング、つまり分電盤からコンセントまでの配線を個別に独立させて、オーディオ機器を隔離するのです。家電製品による電源の汚れは、同じ配線を通じてオーディオ機器に流れ込むのではなく、取敢えずは分電盤まで戻ります。そして、そこからオーディオ専用配線に回って行きます。その距離を越えて、ワザワザ戻ってくるような執念深いノイズは仕方ないけれど、コンセントと分電盤までの配線の往来の中で、ある程度のノイズの減衰を期待するわけです。そして、配線ケーブルの動作は、電線音頭で周知されているように、等価回路で表すと結構複雑なものであり、それなりに色んな擾乱を減衰させてくれるのです。元来、100V用の機器を200Vコンセントに繋ぐと、機器は破損します。このため、コンセントとプラグの形が変えてあり、間違ってもつなげないようになっています。このように、どうしても200Vは専用配線になるので、こうした専用配線の効果も享受できます。
    単相3線式200V
  • 電力会社が一般家庭に提供する200V電力は、単相3線式と呼ばれるものです。もう一つ3相交流というのがありますが、これは工場等で産業用に使うものであり、そういう産業機器がなければ電力会社は供給してくれません。3相交流の電気代は、富国強兵時代の名残りで、政策的に安く抑えられているので魅力はありますが、それ相応の負荷機器を有していないと使えません。200V電源では、同じ消費電力の機器を稼動させても半分の電流しか流れませんから、普通の太さの配線でも大電力が取り扱えます。一般家庭で大き目のエアコンを使ったり、電気乾燥機等を使う場合は、結構な電力を喰うので、今では単相3線式の200Vが入るのが普通です。拙宅は築後30余年のあばら家なので、まだ単相2線式100Vしか入っていなかったんですが、リフォームにあたり床暖房の採用、エアコンの増力等が行われる関係で、今様の単相3線式200Vが必要になり、ついでにオーディオも200V化となったことは、前記のとおりです。単相3線式は、3本の電力線によって100Vと200Vが同時に取れるようになっており、負荷に合わせて分電盤のところのブレーカーを変えるだけです。そんなことで、拙宅ではエアコンを増力した関係で、単相3線式で200Vも取れる分電盤になったのです。
    負荷バランス
  • 電力を消費すると、電圧降下が起きます。また、殆どの場合に、電力波形の頂上付近が酷使されて、波形が鈍ります。これは、正常な電力に対して3次や、5次の歪となります。更に、インバーターを使っている機器などがあったり、近所に工場があったりすると、更には波形にチリチリとしたヒゲが生えます。単相3線式は、中性線1本、100V線2本という3本の電力線によって電力を供給し、その3者の繋ぎ方を変えることで、100Vと200Vを取ります。100V系統は二つ取れますが、一方だけに負荷をかけると、そちらの電圧降下が顕著になって、うまくありません。季節変動する、夏季のエアコン、冬季の床暖等々を、二つある100V系統の各々に上手く振り分け、またオーディオ機器の入る系統には、なるべくノイズを出しにくい機器のブレーカーを配置するのが、通常です。それぞれの家庭の負荷に合わせて、分電盤のところのブレーカーの配置を変えるのです。200Vは、一つしか系統がありませんので、バランスの問題はありません。

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