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複数アーム(^^;
  • 普通に見かけるターンテーブルには、アームが一本しかついていないものですが、何をトチ狂ったか、2本も、3本もアームを取り付けて悦に入る人たちが居ます。Nelsonも、その昔、2本アームに取り組んだことがありました。choice
    複数アーム
  • 今のCDPや、DACでもそうですが、カートリッジでも音が変わりました。そして個々のカートリッジにも得手・不得手があって、打楽器、こする楽器、管振動楽器等をすべて完璧に、というかむしろ、自分の気に入った音で再生してくれるというわけには行かなかったものです。気の済むように聴きたいのが愛好家の常ですから、そうすると盤によって、メインの楽器によって、それに応じたカートリッジを交換することになります。好みのものをいくつかのシェルに取り付けて交換する、というのはそれほど珍しい話ではなかったのです。そこまで来れば、複数アームはもう目と鼻の先なんですが、物の順序として先ずは、カートリッジ交換から話は始まります。
    シェルとアームとの互換性
  • 色んなカートリッジを使い分ける方が多かったので、カートリッジを交換しやすくするようにメーカーの方も考えていました。カートリッジ自体はシェルにネジ止めが普通ですから、シェルと一体になってしまっています。したがって、そのシェルとアームとの互換性が必要になり、殆どのメーカーがシェル交換可能なアームを発売するようになりました。今ではまた、シェルとアームが一体化した方式に戻すメーカーが多くなっていますが、その昔はその一体型から、互換可能型へという流れがあったのです。カートリッジを交換する時は、シェルごと交換するようになり、しかもそれが簡単にできるように工夫がされていました。シェル交換でも、やはりウェイト・バランスの調整は必要で、相当のガイキチでないと、盤ごとにカートリッジを交換するなんて馬鹿はやりません。中には、軽量級カートリッジを重量級のものに交換するために、アームのウェイトまで交換することもいとわなかった方がいらっしゃいました。
    複数アームの設置
  • シェル交換が面倒という方向けの工夫が、ターンテーブルに複数のアームを設置してしまうことです。これなら時間のある時にアームの調整なんかはやって置けますから、切り替えたくなった時に、プリのフォノ1端子をフォノ2端子に切り替えるだけで済みます。カートリッジだけではなく、アームにも個性がありますから、アームの切り替えは元来、理由の無いことではありません。
    小さなターンテーブルでも
  • この複数アームを駆使するには、ボードに何本かのアームが置けるスペースの余裕が要ります。既製品では、トーレンスやラックスのものがありましたが、やはりサイズは大きくなります。省スペース狙いということでもないのでしょうが、マイクロは装置の3本足をそのままベースに使えるように工夫した製品を出しており、これなら一挙に3本アームの世界に突入できました。そういうスペースの余裕がない人のために、SAEC等の専門メーカーがアーム・ブラケット(上図右上)というオプション部品を出していました。これには万力が付いており、それを使ってブラケットをボードに強固に固定すると、そのままアームを設置できるのです。これに控えのアームを取り付けておけば、いつでも別のカートリッジで聴くことができますし、ナント、両方のアームを同時に使って、独立に再生しておいて、プリで両方を切り替えて聴き比べることすらできたのです。Nelsonも、この方式が気に入って、しばらく使っていました。
    現在でも、、、
  • 複数アームの工夫は、実は現在でも、別の形で生きています。複数アームを現状に引き寄せれば、デジタル出力もあるCDPに、独立したDACを別途付加する方法です。これならば、CDP内臓のDACでいつもは聴いていて、盤によってはCDPのデジタル出力を利用して、独立DACで一味違う音を聴くという贅沢が可能です。このように、音に結構響く要素を互換式にしておいて、色んな音を楽しむという工夫は、古今東西生き続けているのです。もっとお手軽には、「何も、独立DACを買わなくても良いですョ。」と、DACのフィルターを切り替えると音が変わることを利用して、2,3種類のフィルターを用意して、曲によって切り替えてくださいというCDPメーカーも、現にあります。
    モノとしての魅力
  • でも、複数アームの話には、DACによる音色の選択と違う面もあります。実は、アームには工業デザイン的に優れたものが多かったので、「そういうアームをいつも眺めていたい」という気持ちも、複数アーム設置には込められていた気がします。アームが真っ直ぐで曲がりの無いもの、S字型に曲がったもの、断面が角型だったり丸パイプだったり、与圧を重力で行うものとバネ力で行うもの、それぞれに機能とデザインの兼ね合いの中で「使うのが楽しい」製品にしようという意欲がにじみ出ていています。そんなアームが2,3本も付いていれば、如何にも「何か、凄そう。」という感じですし、(更には実は大きな勘違いなんですが)「何か、良い音が出そう。」という気がしてしまいます。
    何事も経験
  • まぁ、こういう小技も、限界を心得てやる分には、大事な音楽の楽しみ方の一つです。同時切り替えで音を比べても、「それで本当に良いジャズが聴けたか」というと、必ずしもそうとは限りません。でも、世に言われる「カートリッジによる音の違い」を実体験できるのは確かであり、その差異を大きいと感じるか、僅かだと感じるかは人それぞれだということを、自分なりに理解できる点は大きいと思います。こういう、言ってみれば「試行錯誤」は決して無駄なことではなく、ジャズという音楽とその音との関係について、自分なりのイメージを着実に深めることになる「肥やし」ではないか、と考えます。

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