(Home - Jazz Audio 覚え書き / BACK)

「音色」の浮気
  • 自分のシステムの「音色」
    どんなに立派な装置をお持ちであっても、現実の世界のことですから、それなりの「音色」があります。無論、何を聞いても同じ音に聞こえる、というような極端なことはないのでしょうが、「こういう盤は、ウチのシステムじゃぁ、こんな音がしちゃうんだよねぇ。」ということはありがちです。それ以前に、ノイズが入るとか、ビビルとか、音がくぐもるとかの悩みがある方は、ご愁傷様です。現実の世界で避けられないそういうシステムの癖(そして一部の方の場合には、欠点)は、ある程度調整により変化させることができるので、別に人に聞かせるためだけのものでは無し、好みに応じた音色に積極的に持っていくことも楽しみの一つです。ということで、少し遊んで「音色」の浮気をしてやろうか等という方もいらっしゃるでしょう。
    何が効くか
  • どこを触ると音色が変わるかといえば、やはり出入り口をいじった時の変化はとりわけ顕著です。その中間に挟まれたアンプ、ケーブル等々でも変化はありますが、出入り口は直ぐに分かるほど変化が顕著です。曰く、「入っていない音は出てこない」、「音はスピーカーから出る」
    入り口 ー 昔あるいは、アナログの話
  • 昔はアナログでしたから、入り口といえばカートリッジです。これは話し出すと尽きないくらいそれぞれの方の薀蓄がありました。MMとMCのそれぞれに長短があり、中々面白い工夫の種があります。価格的にも数万円で、今のように20万円クラスはありませんでしたから、手頃な音色いじりができました。これの浮気は、Nelsonも結構やりました。Shure、ADC、Dynavector、Elac、Orthofon等々ですが、今ではEMT、光悦、池田等々なども、面白いのでしょう。現在の常用は、EntreとTechnicaです。特にEntreの細身の音が、Nelsonのシステムには一番よく合うようで、この会社が無くなりかけた時に数本入手しておきました。需要と供給の関係なので仕方の無いことなのでしょうが、数十万円のカートリッジが当たり前という今の世の中は、少しおかしい気がしますが、、、それにしても、カートリッジの段階でビビってしまったり、眠い音になっていたら、その後いくら頑張っても、良い音に仕上げることはできません。
    入り口ー今、あるいはデジタルの話
  • 今はデジタルの世の中です。CD PlayerまたはDACが、昔のカートリッジに当たります。現在、Nelsonは一体型と、もう一つの控えは一体型及びDAC経由の両方の使い方ができるので、その二つが使える状態にありますが、前者の一体型が常用です。DACは真空管式で、コレが結構いい音がします。ただし、これはカートリッジほど気軽にできないことも事実です。なにしろ、現在の世情では、百万円を超える機器も珍しくなく、いくらオトナの趣味だから車一台分は当たり前、といってもそう気軽にヒョイヒョイと交換するわけには行かないのが普通でしょう。ただ、デジタル再生の進歩は著しいようで、「目から鱗」の機器が結構あるようですから時々販売店覗きをしておかないと、浦島太郎になります。イヤ、別に浦島太郎が悪いということは無いのですが、、、カートリッジと同じく、CD Playerが妙な音を拾ってしまったら、その後で修正することは困難です。
    出口
  • これは言うまでもありません。スピーカーは、それ自身が何らかの音色を持っており、その音色がシステム全体を左右します。好みに合わない傾向のスピーカーを、調整や味付けで自分好みに鳴らすというのは、言うは易く、行うは難しというか不可能だと思います。一番普通のやり方は、自分の好みに合わせて選んだ好きなスピーカーを固定してから、入り口を固め、それに合わせて中間のアンプ等を手なずけていく方法だと思います。スピーカーに眠い音を入力して、バッチリの音が出るようにすることは無理です。もし出来たとしても、そのスピーカーで元々切れ味の良いCDを鳴らすと、暴れてしまって手がつけられません。スピーカーの音色は、それなりの上質な音を入れたときに性格付けられるものであり、暴れたCD Playerの音に暴れたスピーカーを組み合わせたら、目も当てられません。
    入り口と出口の間
  • 非常に大雑把に言えば、出入り口が決まれば、中間はあまり気にすることは無く、デザイン、価格等で選択したとしてもそれほどの失敗にはならないものです。それでも、もう少し中音の張りが欲しいとか、高音が一寸うるさめであるとかいった場合などに中間を少しいじるのも効果的ですし、またそのいじり自体を楽しむこともできます。プリアンプ、パワーアンプ、電源、室内配置、ラック、ケーブル、各機器の設置・制振等々、「オーディオはどこを変えても音が変わる。」ということを逆手にとって、音色調整を工夫することができます。
    リキがある音、とキレイな音
  • 音色いじりでは、大雑把に言ってリキがある音、とキレイな音を巧く組み合わせることが大事ではないかと考えています。リキがあるものは過渡的な音の再生に強く、時に自分勝手に過渡的な音を創り出してしまうという悪い癖がありますが、音を生き生きさせるにはこの手の製品が味付けになります。キレイな音の製品は、過渡的な音を整理して、「まぁ。これくらいですか」と纏めてしまい、元の音に強烈な個性があっても整形美人にするという悪い癖がありますが、聴き疲れしないという良い面もあります。ここで「組み合わせる」と書いたのは、リキがある音に持っていこうとする場合でも、その傾向にあるものばかりで固めてしまうのは、どうも良くないようだからです。幾つか試しながら、望みの傾向に持っていくのが、良いのではないでしょうか。キレイな音、というのはオーディオという意味では当然で、不可欠なことなのですが、そればかりで固めてしまうと、時に平坦で、抑揚が無くなってしまうこともあります。Nelsonの感じでは、キレイ系を基本に置いてシステムを選んでおき、自分の嗜好に合わせてリキのある機器を必要なだけ入れ込むという攻め方が良いのかな、と思います。
    冷静に、時間をかけて、、、
  • 音色いじりは簡単なことであり、ちょっとしたことで音色が変わります。このときに大事なことは、「苦労してやったんだから良くなっているはずだ」という気分的なバイアスを排除することです。そういう意味で、即断は必ずしも良策ではありません。もう一つ、一度にいじるのは一か所にして、状態を落ち着かせることも大事です。複数の変更をしてしまうと、どれが結果に大きく寄与したのかが見えず、従ってどれが悪くて、あるいは良くてそういう結果が出たのか分かりません。ということは、時間がかかるということでもあります。そして最後に、いじったところは覚えておいて、必ず元に戻せるようにしておくことです。いじっていると音がおかしくなることは時にあることですが、そこでお手上げではマズイでしょう。

(Home - Jazz Audio 覚え書き / BACK)