トランス式アッテネーター
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オーディオを楽しむ時に、音源を切り替えたり、音量を調節するのにプリアンプを使わずに、アッテネーターを使っているというお話です。弊社比ではありますが、音にリキと艶があるので、気に入っています。
プリアンプの役目
- オーディオの音源には、LP、CD、FM等々があり、聞きたい音源に切り替える機能、そして音量を上下する機能がプリアンプには必要です。また、トーンコントロールと称して、低音、高音の量を調整する回路もあります。全域にわたって細かくレベルを調整したい時は、32バンドイコライザーなどという独立機器を使う人もいます。更に、どのような入力機器からの入力も適切に受け止め、どのようなパワーアンプが繋がれても適切に出力を受け渡す能力が重要です。このような機能をさせる機器を挿入すると、基本的には音は劣化するのですが、そこが世の中の面白いところで、何故か音が良く聞こえる場合が結構あるのです。つまり仕上がりの音で、すべての判断をすべきであるということです。
インピーダンス・マッチング
- CDプレイアー等の機器の出力を受けるプリアンプはそれらの出力を適正に受けるために、高い入力インピーダンスを持っていなければなりません。そうでないと繋がれたCDプレイアー等の音がつぶれたり、ひどい時には機器が壊れたりします。プリアンプの大きな役目である音量調節には、ヴォリュームが使われますが、これが巧く動くためにはその前段よりも十分高いインピーダンスのものを使う必要があります。ということで、その高いインピーダンスのヴォリュームから取出される出力は、やはりどうしてもインピーダンスが上がってしまいます。プリのもう一つの必須機能が、その高いインピーダンスを十分低い出力インピーダンスに低下させる機能です。これによって、若干の距離のある伝送にも強くなり、またどんなパワーアンプを持ってきても、力のある音を出せるようになります。上質なプリの中には、スピーカーさえ駆動できるほど低い出力インピーダンスのものもあるのです。このようなインピーダンス・マッチングには、アンプ回路を使う方法と、トランスによる方法とがあります。Nelsonは、トランスを使っています。
トランスの功罪
- トランスはコアに巻いた入出力のコイルの磁気結合により電力を伝達したり、インピーダンスを変換したりするものですが、昔はそれ自体に音色があって好き嫌いがありました。今は性能も向上し、クセは殆どありません。デジタル機器を使う場合には、漏れ込んで来る不要な高周波を遮断してくれるメリットもあります。そして、何故か出てくる音に力が加わる場合があります。これは理由が明確でないので、好き嫌いがあるというわけです。
Nelsonの場合
- Nelsonは、アナログ、デジタル両方の機器のアナログ出力をトランス式アッテネーターにいれて、3米のケーブルを介して、スピーカーの傍のチャンネルデバイダーに送り込んでいます。ものは、三栄無線のフェーダー・キットFD-350を基本的に自作したものです。構成は、切り替えスィッチを経由してトランスに入り、そしてヴォリュームで音量調整をします。入力(1次側)10キロオーム、出力(2次側)600オームのトランスは、今は無きタンゴのNN-600- 10Kの逆使いです。ここで、6/100にインピーダンスがステップダウンされると共に、丁度再生レヴェルも巧く落ちてくれます。次に繋がっているヴォリュームが、通常使用音量ならば、12時から3時くらいの位置で使えるのが、うれしい所です。音量調整は、600オームの精密抵抗切り替え式ヴォリュームで、東京光音の「2P65CSR25 -600」を採用しています。以前10キロオームのものを使ってみましたが、何故か低いインピーダンスのヴォリュームの方がしっくりきます。内部配線は、OFC撚り線です。これで、出力インピーダンスは最高でも150オーム止まりです。3米余りとケーブルを長く引き回すのですが、ノイズのことを気にしないで居れます。ちなみに、Nelsonのチャンデバの入力インピーダンスは10キロオームですから60倍近くあり、問題の無い接続でしょう。三栄の元のキットでは10キロオームのヴォリュームを使っており、それでは出力インピーダンスは2.5キロレベルですので、長いケーブルの引き回しはマズイでしょうし、次の段の入力インピーダンスが十分に高く取れるか、という点ににも難点があります。さらに、これも何故か分からないレベルの話ですが、ヴォリュームは抵抗値が低い方がどうも音が悪くならない傾向があるようなのです。
東京光音の2P65CSR25-600
- このヴォリューム自体の音質は、議論のあるところです。名器と言う人が居れば、それほどではないと言う人も居ます。昔のラジオ技術誌でやっていましたが、ヴォリュームでかなり音が変わるという主張があります。その座談会では、一部の人がこの東京光音のL型ヴォリュームをけなしていました。ただ、自宅の構成で試した限りではデンオンPRA2000ZRのヴォリュームよりも音は良いし、、、ということでこれを常用してます。
使ってみて
- 三栄の元の躯体が全体を塗装しているので、これにマホガニーの突き板を貼っていますが、落ち着いた色合いで気に入っています。東京光音のヴォリューム2P65CSは、カチカチと摺動音が心地よく、さらに三栄特製の精密なヴォリューム袴のデザインも気に入っているのですが、これは音と関係無いことながら、オーディオ三昧には有りがちなことです。
蛇足
- 三栄無線さんは廃業なされたようです。いずれKT88P.P.100Wx2の20万弱のキットを作ろうと思っていたこともあり、全く残念なことです。今まで色々とお世話になり、有り難うございました。
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