ALTEC 409Bと409−8E
- ここに示した図は、ALTEC 409−8Eの正面です。ALTEC 409シリーズは、20センチの同軸フルレンジです。ALTECにおけるフルレンジの歴史は古く、その出自であるWesternにも755Aがあり、その後ALTECに引き継がれて、名器ALTEC 755E、いわゆるパン・ケーキがその地位を継承しました。これらは全て、シングル・コーンと呼ばれる単一のコーン紙で、全帯域を再生するものです。このユニット群は壁や天井に埋め込んで使う業務用として使われていました。限界を心得た上で聴けば、その音、特に肉声の再生は抜群で、名器とも称されました。とはいえやはり、コーン紙一枚による再生には限界があり、録音技術の進展に伴い求められた高音の再生に難がありました。そこで、これに同軸構成でツイターを付加したのが、409シリーズであり、755シリーズの伝統を引き継ぐ名ユニットです
ALTEC 409BとDIG
- ALTEC 409シリーズでは、最初に409Bを手に入れました。まだ子供が小さい頃で、当然手元は不如意であり、当時ヒット中のJBL L26 Decadeには手が届かず、ALTEC 409Bを国内代理店が箱に入れて売り出したDIGにも手が届きませんでした。このDIGは、名前からも判るようにジャズの再生が上手いこのユニットに目を付けて、結構箱鳴りのするキャビに入れて売り出し、大ヒットした製品です。今でも中古が数万円で取引されているから驚きです。能率が100dB近くあって高いので、真空管アンプに丁度良い組み合わせでした。しかしこれにも手が出ず、中身の409Bユニット単体がやっと買えたんだと記憶します。今のフォステクス等のフルレンジと違って、古い設計ですから少し大きめの箱を作って楽しみましたが、メリハリが効きながらも、ゆったりとした正統的な音でした。同軸構成ですから、上に示した409Bでは、高音の7センチユニットは20センチウーファーのフレームに鉄製の橋を渡し、その真ん中に取り付けてありました。また、気休めかも知れませんが、上図からも判るように、その小さなユニットには周辺に10個近い丸穴があけてあり、高音を拡散して指向性を広げるディフューザーとなっていました。部屋で使わなくなってからは、車のスピーカーとして使いましたが、直射日光の当たる厳しい環境のために、2,3年でボロボロになってしまい、「まぁ、骨までしゃぶったなぁ」ということで廃棄しました。
409−8E
- しかし409Bの音の良さが忘れられずに、余裕が出来た時にその現行品である409-8Eを買いました。ペアで定価3万円程度ですから、2万数千円で手に入ったと思います。409Bとその何代目かの後継機である409−8Eとは、高音ユニットに違いがあります。409Bのようにウーファーにブリッジをかけるのではなく、409−8Eでは、右図からも判るように、ウーファーの真ん中の磁気回路にツイターが直付けされており、ヴォイスコイル位置がもっと近付いています。ツイターの裏には小型のコンデンサーが付けられており、ウーファーは素通し、ツイターはこのコンデンサーで低音を切っていたようです。コーン紙に変わりは無いように見え、エッジも今様のウレタンでは無く、布エッジです。念のため、409−8Eの諸元は以下の通りです。
- ユニット:低域20センチ、高域5センチ、クロスオーヴァー2.5kHz)
- 再生周波数帯域及び最低共振周波数: 50 - 14,000Hz、90Hz
- 能率及びインピーダンス: 98dB、8オーム
- 最大入力: 64W(連続)
- 寸法及び重量:直径21 x 厚み8センチ、1.3kg
ヴォーカルを再生したら抜群
- 20センチ径のフルレンジ、または同軸のユニットは、ウルサイことを言えば低音、高音に不満があります。しかし、余り管がでしゃばらない、ピアノトリオ伴奏位のヴォーカルであれば、再生帯域に不満は全くありません。むしろ単一ユニットでの再生に固有のまとまりの良さ、そして20センチ程度の紙コーンが人の声の再生に最適であるということが納得できる点が、755シリーズや409シリーズの魅力です。
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