(Home - Audio Gears / BACK)

菓子箱オーディオ(^^;
  • 箱鳴りがどうして起こるのか、それを緩和する方法について、ここにメモしました。
    スピーカーの音と駆動力
  • スピーカー・ユニットは、パワー・アンプから電力を貰い、電磁誘導でコーン紙等を動かし、それで空気が揺すられて、結果的に音が出ます。「空気を揺らす」という表現では大したことがないように聞こえますが、実は、その力は結構強力です。空気を揺らすために、コーン紙が前後に動こうとすると、空気にも自分の都合(これを慣性といいます)がありますから、動きたくない素振りをします。そして反作用として、空気は「ウッせぇなァ。てめぇの勝手ばっかり聞いてらんねぇョ」とコーン紙を押し返すのです。この反作用で、ユニットをバッフルに固定するネジに力がかかります。ユニットの固定に、かなり強固なネジを使っていることからも、それが判ります。また、「何か音がビビルなぁ」と思ったら、取り付けネジが緩んでいたというのは、よく聞く話です。コーン紙の動きの反作用は、このように結構大きいので、心する必要があります。そしてそれと同様に、揺すられる「空気の動き」も結構強力で、注意が肝心です。(Nelsonの場合なら最大で10ワット位ですが、現代スピーカーなら100ワットは入れている筈です)
    平面バッフル
  • 話の順序として、平面バッフルにユニットを取り付けた場合から考えてみましょう。ユニットは前後が自由空間なので、気持ち良く鳴っています。でも、コーン紙の動きの反作用はやはり存在しており、取り付けネジを介して、バッフルが相当の力を受けます。大音量にすると「ボワーーン」という音が出てしまいます。そのため、バッフルには補強のリブを付けて、低い周波数でのバッフル鳴りを抑えています。次に、型のボックスにユニットを取り付けている場合は、平面バッフルとまた事情が違います。ユニットの後ろ(つまり、箱の中)の空気は、量が少ない上に、自由には動けません。上記の反作用に加えて、空気の振動によりボックスの6面の板が振動します。普通に「箱鳴り」という時は、このボックスとしての雑音を言います。このため、ボックスに使う板は、厚くて重いものが使われています。マニアなどで、バッフルを鋳鉄や、コンクリートで作る方が居ます。一見「ココ迄やったら、大丈夫だぁ」という気がしますが、どうもそうではないようです。こういう重い素材を使っても使わなくても、この世の中では振動のエネルギーが消滅すること等ありません。エネルギー保存則はきっちり確保されますから、どこかに逃げ道を探すだけです。完全には抑え切ることは、原理的にありえないのです。
    マトリックス方式
  • ただの箱ではなく、更に、リブを入れて補強したり、B & Wのようにマトリックス方式といって、6面の間に穴明き板を縦横に渡して動きにくくするものなどがあります。箱の中が、まるでジャングルジムのようになっています。しかし、このような補強は、音のエネルギーを消滅したり、吸収するのではありません。そこで起こっていることは、振動する部分を細分化することによって、板が振動する周波数が上に上っただけではないか、と思われます。高めの周波数の音なら、後に述べる吸音材を効かせることが出来ます。つまり、マトリクス方式にしたからといって、音のエネルギーがどこかに消えてしまうのではなく、しぶとくエネルギーは生き続けています。ですから、故長岡先生のように「元気が無くなるから、吸音材は入れない」という極端な方も居ますが、普通は次に述べる吸音材を、箱の中に充填します。
    吸音材
  • 吸音というのは、空気が発音振動をしているのをある物体で受けて、その振動を熱に変えて減衰、できれば消滅させることのようです。「吸音材」は繊維状のグラス・ウール、羊毛、綿等によって、音のエネルギーをその材質の中で熱に変えて吸収し、上記の箱鳴りを抑える役目を一部担います。色んな種類がありますが、大抵はスカスカの質量の軽い物質を使っています、これはあまり低音には効かず、200ヘルツ辺りから上の音域ではかなり効きます。長岡さんが「音が死ぬ」と言われたのは、中高音が必要以上に吸収されるのは良くない、という点の指摘です。箱鳴り対策では、中高音はあまり問題では無く、欲しいのは低音の吸収能力です。そして、実は、低音を吸音してくれる材料はあまり無いのが、現実です。部屋の音響環境の調整でも、最後に残るのは、低音域の定在波の解消です。ことほどさように、低音は取り扱いが面倒なようです。

(Home - Audio Gears / BACK)